ゴムがないのに締め付けがなく
ずれ落ちないソックス

 -1st meeting- 2021/12/17

シニアマイスター橋本が25年程前に、あるお医者さんから「むくみのひどい患者さんが、ゴムがきつくてハサミで切って履いているけど見栄えが悪くてかわいそうなんだ」と相談されました。
「それだと、ズルズル落ちてこないですか?」と聞くと、
当然そうなるけど見栄えよりも締め付けが無い方がいいとのことで、みんな我慢している。
そんな声を受けてかなり時間も手間もかけて創り上げたソックスがありました。とは言っても、ヘルス関係には売り先がないので少しずつ売りながら展開していましたが、当時使用していた糸が廃盤、加工先が廃業すると通知があって、
一度弊社でも廃盤になっていました。
ところが今年シニアマイスター橋本が甲状腺中毒症になって、信じられないくらい足がパンパンに浮腫んでしまい、GLEN CLYDEでも人気の高い「relacks」を履いていましたが、それでもゴムのところにはきつく、
ストレスを感じていました。
そこで、過去の開発を思い出し再度「ゴム無し、締め付け無し、落ちにくい」
このソックスを世に送り出そうと「Sock lab.」で取り組むことにしました。
なぜ、再度研究開発をしないといけないのかと言うと、原料、工場、仕上げ屋、加工屋、すべてが現在残っていないのです…。
その為、ベースは頭の中に残っているけど一から創り直さないといけない。
せっかくならば、GLEN CLYDEのみんなで研究して一緒に開発ストーリーを共有したいと思いました。
 
 

 
このプロジェクトのメンバーは、シニアマイスター橋本、マイスター山中、林、酒井の4名で進めて行きます。
 

 
 

-素材-

まずは、素材選びから。
定番のコットンで進めたいのですが、肌触りの良い仕上がりも大事なので
今回は、萱沢商店の「LUXURE:COTTON」
を使ってサンプルを進めます。
この糸は、超長綿を紡績する際に落ちた「落ち綿」のみで再紡績した糸です。
従来は、落ち綿は廃棄されていましたが最近は再紡績されることが増えてきました。光沢感は少なくなりますが、ソフトな質感は十分あるのでエコ素材であり、履き心地も良いソックスを目指しているので、向いている素材だと思います。
@kayazawa_shouten
https://saredo-watanowa.hatenablog.com
 

 
糸が届きました。とてもソフトで優しそうな生地に仕上がりそうです。
たとえサンプルでも自分たちが履きたいと思うデザインで創る事も大事です。
ゴムを入れない事から、
ダブルシリンダーの編み機を使います。
その前に、1つ目のハードルがあります。
ゴムを全く使わない分生地のストレッチ具合を左右する、裏糸(スパンデックス等)の役割が非常に肝心なポイントなので、数種類もしくはGLEN CLYDEの真骨頂ブレンドが必要になってくるかもしれません。
どの様な裏糸を使ったかは、重要な企業秘密のためシークレットにします。
編み立ては、信頼の置ける協力工場「奈良のニットウィン」に依頼。
 
https://knitwin.com
 
少し健康を意識したソックスだけでも、オシャレに足元を飾りたいので針数は96本の2口1目ボーダーできれい目な色を使いたいと思います。
ソックスのゴムを嫌うお客様は、繊細な感覚を持っている方もいると思うので、
つま先はハンドリンキングでフラットにするのも忘れずに施したいです。
ニットウィンには以前リンキング仕様の編み地を作成してもらっているので問題ないと思いお願いしました。
 

 
-2022/01/24-
 
 
編み地が上がりました。
触った感触はソフトで気持ちいいですね。早く足を通したいのですが、つま先が開いている状態です。これからリンキングを施されに行きます。
ソックスというものは、編み下がり時には表地で機械から出てきます。
しかし、つま先を縫う時には縫い目が裏側なので、わざわざ裏返します。
本当にソックスというものは、人の手間がすごくかかる物なのです。
 
-2022/02/01-
 
ハンドリンキングを施し帰ってきました。
やっぱり綺麗ですねぇ。こうやって1工程ずつ進む事で編み地がソックスになりつつある姿を見ると、まるで生き物のようです。
この後、表にひっくり返されて仕上げることで、
みなさんがいつも目にする
ソックスの形になります。
しかし、このプロジェクトは
そんな簡単に事は運びません。
目的は、ゴムを一切使ってないのに
落ちにくいソックスなのです。
仕上げとは、ステンレスの型板にソックスを履かせて高熱の蒸気を当てる圧力の釜に入れる事で整形する大事な工程です。
ただし、この工程では裏糸に使うスパンデックスが縮む事で編み地が締まって整形される為、
縦横に編み地が縮むのです。
問題は、ゴムが入っていないこのソックスは、縦に縮む時に押さえるゴムがない為、丈の寸法を合わせることが非常に困難なのです。
ここから、その攻略点はニットウィンの西口さんと一緒に考えましょう。
 

 

 
こちらは、裏地になります。端の糸が残っているものは切らないで下さい。
ここをギリギリに切ってしまうと、パンクして穴が開き破損します。
 

 
 こちらはハンドリンキングではなく一般的なつま先縫いのロッソです。
 

 
 
-2022/03/24-
 
仕上げと加工が終わり上がってきました。
ここで、ゴムを使わずずれ落ちにくいソックスの秘密を公開します。
ソックスの裏側に
シリコンを薄くプリントする事で、
肌との摩擦によって落ちるのを防ぐ
構造になっています。
出来てしまえば簡単ですが、以前開発した時は
ゼロからの発想だったので機械の選択、
編み地のデザイン、
そして何より時間がかかったのは、シリコンの
厚さでした。薄すぎると摩擦力が弱く、
厚すぎると違和感を感じてしまう為、
ベストの厚さを見つけるまでが大変でした。
試作したデザインは、波型、クロス、
縦ストライプ、斜めストライプ、
長い縦ストライプ、ドット、
そして採用した十字柄と
一つ一つの型代に
数万円かけて研究を繰り返しました。
出来た物を見てしまえば、なんだ単純な十字じゃないかと思いますが、
そこに行き着くまで大変でした。
実際、最後にまさかと思って
とっても単純なパターンで試したところ
一番パフォーマンスが良かった時には、
いろいろ考え過ぎだったのかと思いましたが、
無駄ではなく、この引き出しが財産だと感じました。
 

 

 
これから、担当チームとGLEN CLYDEのスタッフでテイスティングして
製品化へ進めていきます。
 
-2022/04/08-
社内みんなで試着を繰り返しています。
共通の声「今までに全く無い感覚」「落ちてそうなのに落ちてない」
「これ凄いですよ!」などなど。
ソックスはある程度フィットする事で
落ちるのを防いでるのが常識ですが、
このソックスはその概念を覆して全く締め付けられている感覚が無いのに
落ちてこない不思議な感覚です。
社内でも一番足の細いマイスター加賀で検証しました。
Beforeの画像は履いた直後で、Afterの画像は全く触れずに7時間経過の状態です。
 
 

 Before
 

 Before
 

 After
 

 After
 
これは、「ゴムの締め付けが苦手な人」「足が浮腫みがちで圧迫感を感じる人」
などの方々には手放せなくなるほど癖になりそうなソックスだと自負します。
 
これから、どんなラインナップにするかデザインを進めて行きます。
特徴性が高い新しいソックスなので、クラウドファンディングで皆さんに
お披露目しようかと考えています。
そうそう、大事なネーミングも考えないといけないです。
 
 
2022/4/14
 
ネーミングが決まりました!
「キャスパー」「Casper」
履いているのに履いていない感覚のソックス。
そこに居るのに見えていないキャスパー。
という意味で、この名前に辿り着きました。
ロゴやラベルのデザインに取りかかります。